2025年2月19日

生活排水を再利用して水資源を有効活用|仕組みやメリット、ゼオライトの生活雑排水再利用の事例

  • 水再利用
生活排水を再利用して水資源を有効活用|仕組みやメリット、ゼオライトの生活雑排水再利用の事例

水資源の減少が世界的な課題となる中、生活排水の再利用が注目されています。家庭(コミュニティ)や施設から排出される生活排水を有効活用することで、水資源の保護や環境負荷の軽減に繋がる可能性があるのです。

そこで、この記事では、生活排水を再利用するための仕組みやそのメリットについて詳しく解説します。また、ゼオライト株式会社が提供する生活雑排水の再利用の事例を通じて、実際の取り組みを具体的にご紹介します。

水資源の重要性

水資源の重要性

現在、世界では深刻な水不足が問題となっています。国連の報告によれば、世界人口の約40%が水不足に直面しており、2050年までには、その状況はさらに悪化すると予測されています。

これにより、飲料水だけでなく、農業や工業に必要な水の確保も難しくなり、社会全体に深刻な影響を与える可能性があります。

このような状況の中、生活排水の再利用は、限られた水資源を有効活用するための重要な手段として注目されています。生活排水は一度使われた後に捨てられることが一般的ですが、その多くが適切に処理されれば、農業用水や工業用水、さらには公園の噴水や清掃用水など、飲料以外の用途に再利用可能です。

「水を捨てる時代から、再利用する時代へ」という視点を持つことで、未来の世代に向けて水資源を守る役割が果たせるのではないでしょうか。

生活排水とは

生活排水の再利用の仕組みをご紹介する前に、生活排水とはどのような水を指すのかを解説します。

生活排水とは、家庭や施設などの日常生活から排出される水のことを指します。主に風呂や洗濯、台所の使用後に排出される雑排水と、水洗トイレから排出される汚水に大別されます。これらの排水は、そのままの状態で自然環境に放流されると、水質汚染や生態系への悪影響を引き起こす恐れがあるため、適切な処理が必要です。

特に雑排水は、汚水と比較して汚染の程度が低いため、適切に処理することで再利用が可能です。再利用処理された雑排水は、トイレの洗浄水や工業用水、さらには公園の散水や修景用水として利用され、持続可能な水資源管理の一環として役立てられています。

生活排水を再利用する仕組み

生活排水再利用の仕組み

生活排水の再利用は、水資源を有効に活用するための重要な取り組みです。特に、風呂や台所、洗濯機などから排出される雑排水は、トイレの汚水とは異なり、比較的汚染度が低いため、再利用がしやすいとされています。ここから、生活雑排水を再利用する際の一般的なプロセスについて説明します。

生活排水の収集

各家庭や施設から排出される生活排水の内、雑排水と汚水は性質が異なるため、再利用を前提とした専用の配管システムを通じてそれぞれ収集されます。

例えば、トイレからの汚水はし尿を含み汚染度が高いため、高度な処理設備が必要です。一方で、雑排水は比較的汚染度が低く再利用がしやすいとされていますが、それでも十分な処理を行うためには専門的な技術が必要です。

そこで、初めから汚水と雑排水を分離して雑排水のみを収集すると、効率的に再利用に向けた処理を進めていけるようになります。その分離には、以下のような配管設計が重要です。

  • 二重配管(分流式)
    汚水と雑排水を別々の配管で流し、雑排水のみを収集する仕組み。近年の新築住宅や環境配慮型施設では採用が進んでいます。
  • 既存施設での改修
    従来の単一配管(合流式)を改修し、分離が可能な配管へと変更する取り組みも行われています。

スクリーン:固形物の除去

排水が収集されたら、最初の工程では、排水中に含まれる髪の毛や食品くず、紙片などの固形物を取り除きます。

これにはスクリーンという装置が使われ、フィルターのように排水を通過させることで、大きな異物を効果的に捕捉します。この処理により、後の設備が詰まるリスクを大幅に減らすことができます。

MBR:微細な汚染物質の除去

次の段階では、膜分離活性汚泥法(MBR)が使用されます。この方法では、精密ろ過膜(MF膜)を用いて、初期処理では取り除けなかった微細な不純物を除去します。

さらに、微生物の力を利用して有機物を分解し、水質を向上させます。MBRは環境負荷を軽減しながら効率的な処理を可能にします。

RO膜:純度の高い水の生成

最後の仕上げとして、逆浸透膜(RO膜)を使った処理が行われます。

RO膜は、細菌やウイルス、溶解性の有害物質を分子レベルで除去できるため、非常に高純度な水を生成します。この工程により、生活雑排水が再利用可能な水へと生まれ変わります。

再利用先への供給

処理プロセスを終えた水は、さまざまな用途で再利用され、生活排水の新たな価値を生み出します。再利用先として代表的なものには、トイレの洗浄水、冷却水、散水用水などがあり、特に業務用や工業用の水として幅広く利用されています。

トイレの洗浄水

トイレで使用する水は、家庭や施設で大量に消費される水の一つです。トイレの洗浄水に再利用水が利用されることで、飲料水や清潔な水源の消費を減らすことができます。

これにより、生活排水を効率的に活用し、貴重な水資源を節約することが可能に。特に大規模な商業施設やオフィスビルでは、トイレの洗浄水に再利用水を活用することが一般的です。

冷却水

工場や発電所、商業施設などでは、多くの機械や設備が熱を発生させ、その冷却に大量の水を必要とします。そこで、再利用水を冷却水として使用することで、新たな水の使用を減らし、効率的に冷却を行うことがでるのです。

冷却水は水質が厳密に管理される必要はありますが、生活排水を高度処理して再利用することにより、工業施設でも水の無駄を減らすことができます。

散水用水

公園や庭園の散水、街路樹の水やり、農業における灌漑(かんがい)など、再利用水は広範囲な散水活動にも使用されます。散水用水として生活排水を利用することで、農業や都市環境の維持に必要な水を持続可能に供給することができ、自然水源の消費を抑制できます。

工場や商業施設での利用

一部の工場や商業施設では、冷却塔やボイラーでの水としても再利用水を使用しています。

ボイラーでは水が蒸発して熱エネルギーを供給するため、純度の高い水が必要ですが、適切な高度処理を行うことで、生活排水を再利用できる場合もあります。。このように、産業用途での再利用も進んでおり、工場や施設が持続可能な運営を行うための重要な手段となっています。

生活排水を再利用するメリット

生活排水を再利用するメリット

生活排水の再利用は、単に水の節約にとどまらず、さまざまな面で利点をもたらします。ここでは、再利用による主なメリットについて詳しく説明します。

環境負荷の軽減

生活排水の再利用は、環境への負担を軽減するために効果的な方法です。再利用することで、無駄な水の消費を抑え、自然の水資源を守ることができます。

特に、都市部などの水不足が深刻化している地域では、水を生活用水や工業用水として再利用することで、河川や地下水への依存度を減らし、持続可能な水の管理が可能になります。

また、排水処理の過程で発生する汚泥や不要な物質の処理においても、効率的なシステムを導入することで、これらの廃棄物の量を最小限に抑え、環境への負荷を減少させることができるのです。

経済的メリット

生活排水を再利用することは、水道料金の削減に直結するため、企業にとってはコスト削減に繋がるでしょう。

企業では、生産用水や冷却水として再利用することが多く、これにより運用コストを削減。

また、再利用された水は公共の水道施設や浄水場の負担を軽減するため、水道インフラの維持管理費用を抑えることにも貢献します。これにより、長期的な水道料金の引き上げを防ぐ効果も期待できるのです。

持続可能性への貢献

生活排水の再利用は、持続可能な社会の構築に大きく貢献します。再利用することで、自然の水循環に頼らずに安定した水の供給が可能となり、将来の世代にも水資源を確保することができます。

水不足が深刻な地域では、生活排水を再利用することで地域内の水循環を安定させ、外部からの水資源への依存を減らすこともできるでしょう。

さらに、排水を無駄にせず再利用することは、資源の循環型社会を促進し、持続可能な開発目標(SDGs)の達成にも貢献。生活排水再利用が普及することで、環境保護と経済発展の両立が可能となり、社会全体の持続可能性が向上することが期待されています。

ゼオライトにおける生活雑排水の再利用の仕組み

ゼオライトの生活雑排水再利用の仕組み

生活排水と生活雑排水は、どちらも日常生活から排出される水ですが、その内容は異なります。

生活排水は、主にトイレで使用される水や飲料水、風呂・洗濯水などが含まれます。一方、生活雑排水は、台所や洗面所、洗濯機などから排出される水を指し、トイレの水は含まれません。

生活雑排水は、油分や食品の残り、洗剤、汚れた水などが含まれ、汚れが多いため、再利用には高度な処理技術が必要です。

ゼオライトの生活雑排水再利用システムでは、このように汚れが多く含まれる生活雑排水を効率的に処理し、再利用可能な水に変換します。まず、物理的処理で大きな固形物や不純物を取り除きます。この段階では、スクリーンを使って目に見えるごみや浮遊物を除去します。

その後、処理水質に応じて、化学的処理と生物的処理が行われます。化学的処理では、オゾンやUVを使用して有害物質や微生物を除去し、水質を向上させます。さらに、生物的処理には、MBR(膜分離活性汚泥法)を使用して、微生物の力で有機物を分解し、膜も使って微生物と汚水を分離し、効率的に浄化します。さらにRO膜を用いた高度処理を行い、高純度な水を生成。

このように、ゼオライトの生活雑排水再利用システムは、高度な技術を駆使して生活雑排水を安全で再利用可能な水に変換します。このプロセスにより、生活雑排水が新たな価値を持つ水資源として活用され、限られた水資源の有効活用と持続可能な社会の実現に貢献しています。

▶︎排水再利用システムについて詳しくはこちら

生活雑排水再利用の事例

近年、人口増加や気候変動による水資源不足が深刻化する中、生活排水の再利用は持続可能な社会の実現に向けた重要な取り組みとして注目されています。特に、トイレ用水や散水用水などに適した生活雑排水の再利用は、環境負荷を軽減する効果的な方法です。

その代表的な事例が、ホテル日航福岡様での取り組みです。ホテル日航福岡様では、風呂・シャワーから出る排水を回収し、弊社ゼオライトの排水再利用装置を使用して最大1日あたり60㎥を安全な水に処理しています。

この処理された水は、トイレの洗浄水として再利用されており、限られた水資源を有効活用しています。

同ホテルは客室総数360室を有する大型施設であることから、環境に与える影響も決して小さくありません。生活雑排水の再利用を通じて、持続可能な社会の実現に貢献する取り組みを進めています。

▶︎参考:ホテル日航福岡 インタビュー

生活雑排水の再利用に関するご相談はゼオライト株式会社へ

ゼオライト株式会社は、水処理プラント及びメンテナンス事業を軸に、50年以上にわたってお客様の期待を超える「良質な水」と「メンテナンスサービス」を提供し続けてまいりました。

高い技術提案力とお客様第一主義の精神で、井戸や井戸水(井水)にまつわるお困りごとを解決いたします。

【ゼオライトの実績】

  • 逆浸透膜プラント500件以上(専用水道での国内導入数No.1)
  • 水処理プラント納入実績1,400件以上

小型の業務用装置から大規模プラント、災害対策用ユニット型浄水設備まで、幅広い対応が可能です。

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