2. 水処理膜とは?仕組み・技術・活用方法をわかりやすく解説
- 水処理
本コラムでは、水処理膜とは何か?というところから、水処理の工程、水処理膜の技術・仕組み、活用方法についてわかりやすく解説していきます。
安全な水が大量に必要な病院や宿泊施設、商業施設、工場等においては、BCP(事業継続計画)の観点からも災害時の水源確保も重要な課題となっており、公共水道だけに頼らない、井水の活用による水の二元化が注目されています。
水処理施設の導入を検討されている方は、ぜひ参考にご覧ください。
目次
水処理膜とは
水処理膜とは、水に含まれる不純物をμm~nm規模の細孔で分離・除去するための膜の総称で、水処理膜を使用したろ過を「膜ろ過」といいます。近年では家庭用浄水器でも水処理膜の技術が活用され、より身近に感じられるようになりました。
一方で、孔径が小さくなるほど水を通すためのエネルギー量が増える点や、定期的に専門的な保守管理が必要な点などの課題もあり、さらなる低コスト化・実用化に向けて開発や研究が進められています。
膜ろ過の目的
膜ろ過を用いた水処理は、下記のようなニーズに適応しています。
- 海水淡水化
- 純水(超純水)の製造
- 排水処理による放流水質維持
- 排水の再利用
- 災害時に備えた公共水道との二元供給化
世界的な水不足や、持続可能な社会の実現において、膜ろ過を活用した水処理技術は今後ますます発展していく分野だと言えるでしょう。
膜ろ過の処理工程
ゴミや砂等の不純物を含んだ水をそのまま水処理膜にかけてしまうと、細孔内で目詰まりを起こしたり、膜表面に付着・堆積したりすることで、水処理膜に強い負荷がかかります。そのため、膜ろ過で処理する前に、前ろ過で不純物の除去を行わなければなりません。
このような一連の水処理装置を組み合わせたものを処理システムやプラントと呼び、処理目的や水質に応じて装置を構成しています。
水処理施設については「1.水処理の流れと設備紹介|地下水浄化・排水浄化システム」で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
水処理について詳しくは
こちらもご覧ください。
水処理膜の種類
水処理膜は孔径の大きさによって次の4種類に分けられ、それぞれ処理目的が異なります。
水処理膜 | 孔径 | 目的 |
---|---|---|
精密ろ過膜(MF膜) | 公称孔径0.01μmより大きい平膜型、中空糸膜型、スパイラル型、モノリス型等の膜モジュール | 浄水 |
限外ろ過膜(UF膜) | 公称孔径0.01μm 以下の平膜型、中空糸膜型、スパイラル型、モノリス型等の膜モジュール。 | 微粒子、バクテリア、高分子の除去 |
ナノろ過膜(NF膜) | 1nmの細孔を持つスパイラル型 | 微粒子、バクテリア、高分子の除去 |
逆浸透ろ過膜(RO膜) | 0.6~0.8nmの細孔を持つスパイラル型 | 微粒子、バクテリア、高分子、低分子、イオン分子の除去 |
精密ろ過膜(MF膜)
精密ろ過膜(MF膜)は孔径0.1μm程度の水処理膜で、主に微粒子や細菌類の除去に用いられます。浄水を目的とし、前ろ過・浄水処理・下水処理など水量の多い場面で活用されます。
水に溶解した物質はろ過できませんが、効率的に汚泥除去できることから災害時の緊急用ろ過装置や家庭用浄水装置にも使われています。
限外ろ過膜(UF膜)
限外ろ過膜(UF膜)は孔径0.01μm程度の水処理膜で、微粒子やバクテリア、高分子の除去が可能となっています。そのため、細菌・ウイルス・クリプトスポリジウム(※1)を除去することが出来ます。
限外ろ過膜(UF膜)単体ではイオン分子のような粒子の細かな成分はろ過できませんので、後述する逆浸透ろ過膜(RO膜)とのユニットで使用されることが一般的です。
※1:クリプトスポリジウム…寄生性原虫。クリプトスポリジウム症の原因となり、感染・発症すると下痢や腹痛、発熱といった症状が見られる。
ナノろ過膜(NF膜)
ナノろ過膜(NF膜)は孔径0.001μm程度の水処理膜で、微粒子やバクテリア、高分子の除去が可能となっています。限外ろ過膜(UF膜)より小さな粒子や高分子を除去することができ、硫酸イオンなどの二価イオンや硬度成分、スケール成分の除去を目的として活用されています。
一方、低分子やイオン分子の除去率は70%以下に留まり、別名「ルーズRO膜(逆浸透ろ過膜)」とも言われています。
逆浸透ろ過膜(RO膜)
逆浸透ろ過膜(RO膜)は孔径0.0001μmと現存する中で最も目の細かい水処理膜で、微粒子やバクテリア、高分子の除去だけでなく、イオン分子まで除去することが可能となっています。つまり、逆浸透ろ過膜(RO膜)は水分子以外を通さない構造を持っているのです。
主に、海水の淡水化や純水・超純水の製造、果汁や化学薬品の濃縮、下水の再利用、災害時の飲み水確保などに使用され、最近では家庭用浄水器にも取り付けられるようになりました。
逆浸透ろ過膜(RO膜)は世界中から高い注目を浴びている高度な技術で、その中でも日本の逆浸透膜技術は世界トップシェアを誇ると言われています。
膜ろ過技術がもたらす水処理の将来性
膜モジュールを採用した水処理施設は今後はさらに増加していくと見込まれています。
それを裏付ける報告として、経済産業省の「水ビジネス海外展開施策の10年の振り返りと今後の展開の方向性に関する調査 報告書(令和3年3月)」によると、世界の水ビジネス市場は2010年の49.7兆円から2020年の70.1兆円まで1.4倍まで伸び、2030年には2010年の2.26倍である112.5兆円まで伸びることが予想されています。
膜ろ過による水処理技術は人々の暮らしを豊かにすることは確かであり、多様な将来性を持つものだと言えます。
ゼオライトの水処理膜技術
弊社ゼオライトでは、世界トップレベルの水処理膜技術を有する各メーカーの高性能な膜を採用し、水処理に関する豊富なノウハウ・実績を駆使しながら、原水の水質や用途・規模に合わせて、各種の膜を効率的に組み合わせて最適なシステムをご提案しております。
加えて、給水・給湯設備にスケールや腐食障害が発生しないように対策を講じたご提案も実施しております。
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