12.【更新】PFAS(有機フッ素化合物)とは?規制や除去する方法を徹底解説!
- 水処理
近年、世界的な問題となっているPFAS(ピーファス)は、環境汚染や人体への影響が懸念されています。私たちが日常的に利用している水道水にもPFASが含まれていることが分かっており、PFASを除去する動きは今後さらに大きくなることでしょう。
そこで本記事では、PFASの特性やどんな物に利用されているのか、どのようにして人体に侵入するのかなど、詳しく解説しています。また、水道水に含まれるPFASを除去する最適な方法も紹介しているので、是非参考にしてください。
目次
有機フッ素化合物「PFAS(ピーファス)」とは
PFAS(ピーファス)は、日本では有機フッ素化合物として知られ、化学的に最も結合力の強い炭素-フッ素結合を持つ人工化合物の総称です。現在、4700種類以上のPFASが特定されていますが、その中でも代表的なものとして、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)とPFOA(ペルフルオロオクタン酸)の2つがあげられます。
PFOSとPFOAは、熱や薬品、紫外線にも強く、水と油の両方をはじくという特徴を持っており、私たちが日常的に使う多くのものに応用されています。例えば、次のようなものには必ずと言って良いほどPFOSかPFOAのどちらかが使われているでしょう。
- フッ素加工フライパン
- 防虫剤
- 撥水加工のされた雨具
- ハンバーガーなどの包装紙
- 崩れにくい化粧品
- 汚れを弾くソファやカーペット
- スマートフォン
生活用品のほかには、空港や軍事基地、石油コンビナートなどで使われる泡消火剤もあり、私たちの生活を便利なものにしてきました。しかし実は、PFASが持つもう一つの性質「残留性と蓄積性」による影響が問題視され始めているのも事実で、環境汚染や人体への毒性など、様々な影響が懸念されているのです。
PFASを除去すべき理由
PFASは、自然界や体内で分解されにくく蓄積しやすい性質を持っており、「永遠に残る化学物質」とも呼ばれています。また、水に溶けやすいという性質も持ち合わせているため、工場排水などによって周辺の地下水や水道水の汚染が問題となっています。
このことから、現在ではPFASの製造・使用・輸出入は禁止または制限されているのですが、永遠に残る化学物質であるため、私たちの生活に欠かせない水道水にもPFASが残留していることが分かっています。
実際に2019年に実施された環境省の調査結果によると、13都道府県の37地点の水道水で目標値(50ng/1L)を超えた高い濃度が確認されました。
*【参照】環境省「令和元年度PFOS及びPFOA全国存在状況把握調査の結果について」
また、地下水においてもPFOS・PFOAが確認されており、国内最大の数値となった大阪市では目標値の100倍を超えています。その他、東京都や沖縄県を含む13の地域でも10倍以上、全国的に見ると75箇所の地下水でPFASが目標値を超える結果となりました。
(出典)環境省「有機フッ素化合物全国存在状況調査(令和元年度、2年度)」
つまり、私たちが安全に水を利用するためには、水中に残留したPFASを除去する必要があるのです。特にPFOAは「発がん性の恐れがある物質」として分類されているため、他の物質への代替が進んでいます。しかし、これまでに使用されてきたPFOS・PFOAの残留に加え、代替物質となる他のPFASでも環境汚染や健康被害などが進行中であることから、今後はPFAS全般の規制が厳しくなると考えられるでしょう。
PFAS(ピーファス)の摂取経路・侵入経路
PFASの主な摂取・侵入経路は、食品と水道水です。他には、PFASを含有するものを使うことで経皮吸収することもあります。特に工場排水による環境汚染が主な原因となっており、土壌や河川から食品と水道水へとPFASが拡散し、最終的に人々の体に摂取されることが確認されています。
水道水などの飲料水と食品からの体内吸収
水に溶けやすい性質を持つPFASは、工場排水や廃棄物の処理によって河川や地下水に流れ出ます。そして、河川や地下水は水道水の水源であるため、水道水にもPFASが含まれることになるのです。そのため、水道水を毎日利用している私たちは、知らず知らずの内に直接口からPFASを摂取してしまっていると言えるでしょう。
また、PFASは残留性が高く土壌にも蓄積しやすいため、PFASを含んだ土壌で成長した野菜や作物を食べていることも、人体にPFASが侵入する原因の一つだと考えられます。さらに河川や海に侵入したPFASが魚や海藻類に蓄積されることもあるでしょう。つまり、一見安全に見える国産の食物でも、このような形でPFASを含む可能性が高く、私たちの体内には少しずつPFASが蓄積されていっているといっても過言ではありません。
商品を使うことによる経皮吸収
PFASのもう一つの摂取経路として、経皮吸収も考えられています。PFASは、撥水性や防油性などの特性を活かして、テフロン加工の調理器具や撥水コーティングの衣類、化粧品、防虫剤などに利用されています。そして、これらの商品を使用することで、PFASが皮膚を通して経皮吸収されてしまうのです。
特に化粧品は直接肌につけるもので、多くの女性は毎日と言って良いほど何かしらの化粧品を肌に塗っているでしょう。このようにPFASは、生活を便利にする商品に多く使われているため、全てを使わないようにすることは現実的ではありません。また、PFOS・PFOAに代わる他のPFASの利用も進んでいますが、それらにも毒性が確認されており、今のところPFASを完全に吸収しないということは難しいのかもしれません。
水処理について詳しくは
こちらもご覧ください。
PFASが体に及ぼす影響
4700種類もあるPFASの全てにどのような毒性があり、それぞれが体に与える影響がどのようなものかは明らかになっていません。しかし、PFOS・PFOAについては、近年の研究により、以下のような影響が指摘されています。
- 甲状腺ホルモン、男性・女性ホルモンなどの撹乱作用
- 腎臓がん、前立腺がん、乳がんなどの発がん性
- 不妊、低出生体重児など、乳児・胎児・への影響
- 感染症にかかりやすくなるなど、免疫力の低下
- 肝疾患など肝臓への毒性
- 血中コレステロール値の上昇
- 潰瘍性大腸炎
この中でもとくに、免疫力の低下や低出生体重児、コレステロール値の上昇、腎臓がん、前立腺がんは、影響の確実性が高い毒性だということが分かっています。
なお、これらの影響を受け、米国やEUを始めとする多くの国では、現在PFASの使用規制が進められています。 環境汚染を軽減して人々の健康を守るためにも、今後はさらに適切な管理と代替可能な安全な化合物の開発が急がれることでしょう。
PFASの規制について
「残留性が高く蓄積しやすい」という特性を持つことから、国際的に規制の強化が取り組まれてきました。POPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)では、2009年にPFOSが、2019年にはPFOAが製造および使用禁止となり、日本では世界の動きを後追いする形で規制が進んでいます。
米国・欧州 | 日本 | |
---|---|---|
2009年 | POPs条約でPFOSの製造・使用・輸出入制限 | PFOSが化審法で第一種特定化学物質に指定 |
2010年 | – | PFOSは代替困難な用途以外は禁止 |
2019年 | POPs条約で PFOAの製造・使用・輸出入禁止 | PFOA が化審法で第一種特定化学物質に指定される |
2021年 | – | PFOA の製造・使用・輸出入禁止 |
表からもわかるように、日本では2009年にPFOSが化審法で第一種特定化学物質に指定、代替困難な用途以外は2010年より禁止となりました。PFOAについては2019年に化審法で第一種特定化学物質に指定され、米国や欧州から2年ほど遅れて製造・使用・輸出入が禁止されています。
化審法とは「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」を略した言葉で、「化学物質による環境汚染が、健康や生物に被害を及ぼすことを防ぐために、化学物質の製造・輸入・使用などを規制すること」を目的として制定された法律です。
また、2023年現在のPFASについての規制は、EUにおいて、PFOS・PFOAだけでなくPFAS全般に対する規制案が検討されています。
これまで毒性が懸念されるPFOS・PFOAの代替として他のPFASが使われてきましたが、その高い残留性と蓄積性はPFAS全般に言えることが分かってきました。その観点から今回のEUの規制案では、一定濃度を超えたPFASを含む混合物や成型品は、製造・販売・使用を完全に禁止する方針だそうです。
そしてこのEUの規制案をきっかけに、POPs条約においても今後はPFAS全般の規制が進んでいくと見られます。
日本の水道水・地下水におけるPFASの規制は?
水道水や地下水におけるPFOS・PFOAについての法的な規制値を設けている国はありません。しかし、一部の国では目標値が設定されており、日本もそのうちの一つです。
各国で目標値は異なりますが、日本では令和2年4月に厚生労働省においてPFOS・PFOAは水道水の「水質管理目標設定項目」として位置づけられ、暫定目標値「50ng/L(PFOSとPFOAの合計値)以下」が設定されました。
この目標値は、「体重50kgの人が、一生涯にわたり1日2Lの水を毎日摂取し続けても、健康への悪影響がないと推定される濃度」として算定されています。
- 関連ページ「有機フッ素化合物PFAS(ピーファス)について」
水道水や地下水のPFASを除去する方法
様々な毒性が懸念されるPFASを摂取しないようにするためには、体内に直接入る水からPFASを除去することが一番の近道です。ここでは、私たちに必要な水源である地下水や水道水のPFASを除去する最適な方法を紹介します。
PFASは逆浸透膜(RO膜)技術で除去可能
PFASを除去する方法として最も有効とされているのが、逆浸透膜(RO膜)を利用した水処理技術です。厚生労働省の見解によると、従来の浄水方法(凝集沈殿ろ過・オゾン処理・消毒処理など)では、PFASの除去は期待できません。
効果的にPFASを除去するためには逆浸透膜が最適だとされています。逆浸透膜で水処理をした場合、PFOSで99%以上、PFOAは92~97%除去できるという研究結果もあります。つまり、PFASのない安全な水を選ぶには、逆浸透膜で処理されているかいないかを確認することが重要となるでしょう。
*【参照】厚生労働省「令和4年度第2回水質基準逐次改正検討会議事録「8.4.2 高圧膜処理」について」
家庭でPFASを除去する方法
私たち個人が日常的に使う飲料水を「PFASのない安全な水質」にするためには、ペットボトルの水を購入したり、ウォーターサーバーを利用して対処することになります。
特にご家庭で水道水を利用する場合、沸騰させればPFASを除去できるのでは?と考えるかもしれませんが、煮沸消毒では PFAS は除去できません。むしろ、煮詰めることで PFASの濃度が高まるとされているため、ペットボトルの水やウォーターサーバーを使うことがおすすめなのです。
ただし、ペットボトルやウォーターサーバーを利用する場合でも、逆浸透膜(RO膜)で処理された水(RO水)、またはRO浄水器を利用する必要があります。前述した通り、PFASは従来の水処理方法では除去することができません。必ずRO水の物を選ぶようにしてください。
創業以来50年以上の浄水技術を持つゼオライトでは、家庭用RO浄水器やROボトルドウォーターを提供しています。どちらも逆浸透膜を採用しており、ご家庭でもPFASを除去した安全なRO水がご利用いただけます。
「家庭用RO浄水器」は水道直結型で好きなだけ安全な水を利用でき、「ROボトルドウォーター」は適切に処理された水が自宅に届くものです。それぞれについて詳しく知りたい方は以下からご覧ください。
- 家庭用RO浄水器「WAKAMiZU PRO」
- 宅配RO水「WAKAMiZU BASIC」
大規模施設でPFASを除去する方法
病院や介護施設など規模の大きな施設では、毎日のように大量の水が利用されており、中には地下水を水源として活用している事業所もあります。このような規模の大きい施設でPFASを除去する場合、家庭用の浄水器やボトルウォーターでは賄いきれません。
そこで、逆浸透膜を採用した水処理プラントであれば、大量の地下水を適切な水に処理して利用することが可能になります。また、水処理プラントを導入することは、安全な水質が得られるだけでなく、水道代の削減や災害時の水源の確保としても役立つため、現在では水処理プラントを導入する企業が増えてきているのです。
ゼオライトでも水処理プラントの設置を行っており、これまで多くの事業所へ導入してきました。ゼオライトの逆浸透膜は、細菌ウイルス類は100%、塩分や農薬ヒ素、ダイオキシンなどの有害物質も95%以上除去し、PFASも除去できることが確認されています。
高純度で安全な水を確保することは、事業継続と利用者様の健康にも繋がると言えるため、今後さらに注目を浴びるPFASの除去のためにも、ぜひ水処理プラントの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
ゼオライトの逆浸透膜プラントについて詳しく知りたい方は以下からご覧ください。
逆浸透膜に関するご相談はゼオライト株式会社へ
ゼオライト株式会社は、水処理プラント及びメンテナンス事業を軸に、50年以上に渡ってお客様の期待を超える「良質な水」と「サービス」を提供し続けてまいりました。
高い技術提案力とお客様第一主義の精神で、井戸や井戸水(井水)にまつわるお困りごとを解決いたします。
【ゼオライトの実績】
- 逆浸透膜プラント400件以上(専用水道での国内導入数No.1)
- 水処理プラント納入実績1,300件以上
小型の業務用装置から大規模プラント、災害対策用ユニット型浄水設備まで、幅広い対応が可能です。
「まずは逆浸透膜について知りたい」という方も、お気軽にご相談ください。