2024年3月14日

20.最新のPFASの規制動向と国内におけるPFASの発生状況について

  • 水処理
最新のPFASの規制動向と国内におけるPFASの発生状況について

前号のコラムでは、代表的な有機フッ素化合物「PFAS」としてPFOS(ペルフルオロタクタンスルホン酸)とPFOA(ペルフルオロオクタン酸)についてお話しましたが、その後、国内では2023年11月28日に「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法令施行令の一部を改正する政令」が閣議決定され、2024年2月1日には新たにPFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン)という有機フッ素化合物が第一種特定化学物質に指定されることになりました。

そこで今回のコラムでは、最新のPFASの規制状況や、国内におけるPFASの発生状況、PFASの処理技術、新たに検討すべき課題等について記したいと思います。

PFHxSの概要とPFASの規制動向

PFHxSはPFAS(有機フッ素化合物)の一種で、既に国内にて使用が規制されているPFOSとPFOA同様の性質を持つ物質です。

その用途はPFOS及びPFOAと酷似しており、PFOS・PFOAが人体に有害であることから、これらの代替材として以下のような物に使用されてきました。

  • 泡消火器
  • 金属めっき
  • 織物
  • 革製品
  • 研磨剤
  • コーティング
  • 電子機器・半導体など

しかし、このPFHxSもPFOS・PFOA同様、有害性や難分解性等の性質が報告されていることが分かっています。

そのことから、2022年6月に開催されたストックホルム条約(POPs条約)の第10回締約国会議COP10で付属書A(廃絶)に追加されました。

これがきっかけで第一種特定化学物質となったPFHxSは、PFOS及びPFOA同様に基準値設定されることが予想されます。

一方、その後のPOPS条約で新たに追加されたPFASはなく、日本国内においてもPFOS・PFOA・PFHxSに続いて第一種特定化学物質に指定されるPFASは当面ないと考えられます。

水処理について詳しくは
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世界のPFAS規制状況

表.1 PFASの規制状況 ※2023年11月時点

国又は地域 項目 値(ng/L) 法的拘束力 根拠法等 備考
日本 PFOS及びPFOAの合計 50 なし 水質管理目標設定項目
PFHxS なし 要件等項目 第一種特定化学物質に指定予定
WHO PFOS 100 なし 「WHO飲料水質ガイドライン」作成のための背景文書 暫定文書
PFOA 100 なし
総PFAS 500 なし
米国 PFOS 4 あり 安全飲料水法 提案中の規制値
PFOA 4 あり
PFNA 1.0 あり
EU 全PFAS 500 あり 改正飲料水指令
複数PFAS 100 あり

※水道技術研究センター「水道における PFAS の処理技術等に関する資料集」より抜粋

表1は、日本・WHO・米国・EUにおけるPFASの規制状況です。(2023年11月時点)

日本

日本では、2020年4月に水質管理目標設定項目として、PFOS・PFOAの量の合計が50ng/L以下(暫定値)に設定され、2021年4月1日からはPFHxSが目標値なしの要検討項目に設定されました。

しかし、50ng/Lは水質基準値でなく目標設定項目としての暫定値であるため、「どの程度のPFAS濃度なら安心できるのか?」と、不安視する方も多いかと思います。

ちなみに日本における暫定値の設定根拠は、「体重50kgの人が水を一生涯にわたって毎日2リットル飲み続けても、この濃度以下であれば健康に悪影響が生じないと考えられる水準」とされています。

したがって、検出されたPFASの種類と濃度に応じた適切な処理を行い、暫定値(50ng/L)を下回ることが当面の取組み課題となるのです。

WHO

WHOでは、PFOS及びPFOAのガイドライン作成のための暫定文書において、それぞれ100ng/Lと提案されています。

また、同時に30種類のPFAS(PFOS・PFOAを含む)を「総PFAS」と称して500ng/L以下で管理することが提案されました。

米国

米国環境保護庁(USEPA)は2023年3月、6種類のPFASについてのMCL(最大許容濃度/日本の水道水質基準に相当)を、PFOSとPFOAを4ng/Lに、PFNAを1.0ng/Lとする案を発表しました。

この案は水質基準として2026年から法的拘束力を持って施行される予定です。

EU

EUは、2021年1月に施行された「改正飲料水指令」の中で、全PFASを500ng/Lに、複数PFASを100ng/Lと規定しました。

全PFASとは全てのPFASの総量。複数PFASは20種類のPFAS(PFOS・PFOAを含む)の総量を指し、この20種類については「改正飲料水指令」の中で内訳が示されています。

国内におけるPFASの発生状況

令和2年度、環境省では有機フッ素化合物について、水環境における全国的な存在状況を把握するため、全国143地点にて調査を実施しました。

そのうち12都道府県21地点において水環境の暫定的な目標値(PFOS・PFOAの合計値で50ng/L)の超過が確認されています。(表2)

表.2 令和2年度有機フッ素化合物全国存在状況把握調査結果一覧
(PFOS及びPFOA暫定的な目標値超過地域)

No. 都道府県名 市区町村名 地点区分 地点名 河川・湖沼・海域名 PFOS
(ng/L)
PFOA
(ng/L)
PFOS+PFOA
(ng/L)
1 宮城県 名取市 地下水 120 670 790
2 山形県 酒田市 地下水 15 50 65
3 千葉県 千葉市 河川 源町407番地地崎 葭川 100 17 120
4 東京都 大田区 地下水 20 43 64
5 東京都 小金井市 地下水 55 14 69
6 東京都 国分寺市 地下水 130 21 150
7 神奈川県 綾瀬市 地下水 1300 48 1300
8 福井県 越前市 地下水 3.0 150 150
9 愛知県 名古屋市 河川 日の出橋 新堀川 98 7.4 100
10 愛知県 豊山市 地下水 74 17 91
11 大阪府 堺市 河川 小野々井橋 和田川 13 38 52
12 大阪府 摂津市 地下水 11 160 170
13 大阪府 大阪市 地下水 25 5500 5500
14 大阪市 大阪府 地下水 14 1700 1700
15 兵庫県 神戸市 河川 水道橋 伊川 14 190 200
16 奈良県 川西町 河川 保田橋 飛鳥川 2.7 67 70
17 岡山県 岡山市 河川 朝日近橋 日近川 4.1 53 57
18 沖縄県 沖縄市 河川 ダクジャク川 ダクジャク川 430 21 450
19 沖縄県 うるま市 湧水 アカザンガー 53 130 180
20 沖縄県 中頭郡 湧水 シリーガー 1100 57 1100
21 沖縄県 中頭郡 湧水 インガー 40 11 52

環境省 令和2年度有機フッ素化合物全国存在状況把握調査結果一覧より抜粋

また、その後もマスコミや自治体による独自の調査が行われ、PFASの検出はより広範囲に拡大の傾向にあることが分かっています。

さらに民放テレビ局の調査結果によっても、22都道府県47地点で非常に高濃度のPFASが検出されたことが公表され、更なる調査(水質、土壌、血中濃度、健康被害等)の必要性が報じられているのです。

PFAS問題の事例

“写真:朝日新聞デジタルより

東京・多摩地区は全国的にも深刻なホットスポット(汚染地帯)となっています。

そのことから東京都水道局は、11ヵ所の浄水所・給水所で水道水源としていた地下水からの取水を止めました。

公共の水道では、このように水源を変えたり、PFAS濃度に応じた処理によって、暫定目標値を下回る安全な水の供給に向けた対策に取り組んでいる一方で、地下水を利用する施設からは切実な問題が聞こえてきます。

例1:一橋大学

国立市の一橋大学では、キャンパス内の飲み水や食堂で古くから地下水を利用していましたが、200ng/L以上の高濃度PFASが検出され、年々その濃度に上昇がみられました。

同大学では、厚生労働省が水質管理の暫定目標値を定めたことを受け、2020年春に地下水の利用をやめ、上水道に切り替えました。これに伴い、年間の水道代は1700万円のコスト増となったそうです。

例2:桐朋学園男子部(小中高)

また、同じ国立市内の桐朋学園男子部(小中高)でも地下水を利用していましたが、国立市内の地下水から562ng/LのPFASが検出されたことを受け、地下水の使用を取りやめました。

こうした東京都多摩地域でのPFAS汚染は、地下水の流向等から、その汚染源は2012年に約3000リットル以上の泡消火剤が漏出したことを認めている米軍横田基地と推測されていますが、日米地位協定の問題等から、立ち入り調査は進んでいない状況です。

例3:岡山県吉備中央町

2023年11月、岡山県吉備中央町では沢に近い資材置き場からフレコンバック入りの使用済み活性炭が約580袋発見され、その周囲の土壌からは約62,000ng/LのPFASが検出されました。

沢水を水源とする近くの浄水場からは暫定目標値(50ng/L)を上回る値でPFASが検出されており、関連は断定されていないものの、放置された活性炭が排出源の可能性が高いとみられています。

この事例の活性炭のように、溶解や濾過に使った残りかす「残渣」の処理についてもPFAS問題の重要な検証課題ですので、次回以降に本コラムでも取り上げる予定です。

PFASの処理技術について

PFASを除去するための飲料水処理技術の選択肢は、水処理プロセスや流入水質条件によって変わってきます。酸化処理(塩素、オゾン等)、UV処理、光酸化技術、生物ろ過処理、低圧膜処理等はPFAS処理には不適です。

有効な処理としては、粉末活性炭、粒状活性炭、イオン交換、逆浸透膜(RO膜処理)などがあります。このうち粒状活性炭がもっとも一般的で、多くの浄水施設でも汚染物質を除去するために使用されています。

飲料水からPFASを除去するためには、PFASの種類や濃度、処理量等を踏まえ、どの処理が最も効果的または適切であるかの判断が必要となります。

表3に、処理技術ごとのPFAS除去率、コスト、発生する残渣等をまとめました。

表.3 PFAS処理技術のまとめ

処理技術 長鎖PFAS
PFOS、PFOA、PFHxS等)
短鎖PFAS
(PFCA、PFSA、PFHxA等)
コスト 残渣 備考
粉末活性炭 中~高 廃活性炭 ・断続的な使用に有効
・処理の前段に添加
粒状活性炭 中~高 廃活性炭 ・交換頻度が高い
・ろ過の後段に適する
イオン交換 中~高 中~高 廃樹脂 ・PFAS除去に適したイオン交換樹脂の選択が必要
NF/RO膜処理 濃縮排水 ・膜寿命が長く、一貫した除去率が維持できる

家庭でのPFAS処理について

家庭でのPFAS処理には、浄水器によって暫定目標値(50nm/L)を下回ることが可能とされています。

米国の環境団体EWG(Environmental Working Group)や保健機関、試験所、科学研究者等の情報から判断すると、PFASで汚染された水道水の家庭内処理に最も効果的な選択肢は、活性炭フィルターと逆浸透膜システムです。

研究によると逆浸透膜処理は、PFOS、PFOA、PFHxS、PFBS、PFHxA、PFNAなど試験対象となったすべてのタイプの長鎖、短鎖PFASの除去に有効であることが実証されています。

このように家庭でのPFAS対策に有効な浄水器ですが、カートリッジの交換を怠ると逆に有害物質の温床となる可能性があるため、メーカーが定める交換タイミングを守ることが重要です。

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大規模施設でのPFAS処理について

「PFAS問題の事例」で触れた学校の事例のほか、病院や工場でも古くから地下水を利用している施設は多くあります。こうした中で、いま問題が発生しているのは、地下水を塩素消毒のみで飲料水として使用してきた施設等です。

処理した水を分析した結果、塩素では除去できないPFASが検出されたため、地下水利用を止めているという声を多く耳にします。

毎日のように大量の地下水を使う施設では、家庭用の浄水器では賄いきれません。とりわけ病院や学校のように多くの人が飲料水として地下水を口にする施設では、万が一も許されない水質管理が求められます。

PFAS以外の有害物質も含め、流入水質条件や使用する水の量、さらには水の用途を考慮した最適なオプションを設定し、処理施設の設計をする必要があるでしょう。

災害時の断水対策をはじめ、多様な価値を持つ地下水を安全に、持続的に利用いただけるよう、ゼオライトではお客様の水環境に応じた最適なソリューションを提供しています。

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逆浸透膜は水分子以外の物質をほとんど除去できるという特徴があり、PFOS及びPFOAについても90%以上除去できるという研究成果があります。

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