工業用水を飲料化|飲料水との違いや飲める水にするために必要な技術とは
- 水処理

工業用水は工場や事業所で広く利用されていますが、近年ではこれを飲料化する動きが注目されています。水資源の有効活用やコスト削減といった目的から、工業用水を安全に「飲める」水へと変える技術が進化しているのです。
この記事では、工業用水と飲料水の違いを整理し、工業用水を飲料化するための技術や課題についてわかりやすく解説します。
目次
工業用水とは?

まず、工業用水の定義についてご説明します。
工業用水は、製造業、電気供給業、ガス供給業、熱供給業といった工業活動に使用される水を指します(飲料水や水力発電用の水を除く)。これは「工業用水道事業法」(昭和33年、法律第84号)に基づいて定義されています。
また、「工業用水道」とは、工業用水を供給するための導管を通じて水を提供する施設を指し、その事業を「工業用水道事業」と呼びます。(参考:経済産業省)
工業用水と飲料水の違い
次に、工業用水と飲料水(上水道)の違いについて、品質基準や利用目的の観点から説明します。
浄水処理の有無
飲料水は、湖や川、ダムなどから採取した水を塩素消毒や凝集剤での処理や、ろ過処理を行うことで安全性を確保します。
一方、工業用水も湖や川、ダムなどから採取し、用途に応じて処理方法が異なりますが、一般的には沈殿処理などの一次処理のみを行い、飲料水のような浄水処理は実施されません。しかし、砂や細かいゴミ、不純物などは用途に応じて除去されます。
水質検査の有無
飲料水は、水道法(水道法第4条)に基づき、厳しい水質基準(51項目)をクリアする必要があります。一方、工業用水は水道法に基づく検査は行われず、細菌や微生物が残っている場合があります。そのため、飲料としては使用できません。
ただし、工業用水にも自治体ごとに定められた水質基準や水圧基準(濁度、水素イオン濃度など)があり、利用目的に応じた基準を満たす必要があります。
工業用水を飲料化する理由
ここから、工業用水を飲料化する主な理由について、以下の観点から説明します。
ただし工業用水飲料化に関しては、各自治体の見解がありますので、計画段階で飲料化できるのか事前の協議が必要となります。
低コスト
工場などでは、工業用水と上水道を併用しているケースが多く見られます。 その理由の一つに、上水道と比べて工業用水の利用コストが約1/4程度とされ、費用削減が可能である点が挙げられます。上水道の一部を工業用水に置き換えることで、経済的なメリットを得られます。
水資源の有効活用
水は限りある資源であり、世界的に水不足が深刻な課題となっています。 「国交省:水資源に関する世界の現状、日本の現状」によると、約12億人が安全な水を利用できず、約24億人が適切な衛生施設を利用できていません。また、水に関連する病気で毎年約200万人の子どもが命を落としています。
このような背景から、水資源の効率的な活用が求められており、工業用水の活用(飲料水への転用を含む)はその一環として注目されています。
BCP対策
大規模災害時には、上水道が機能停止する可能性があります。そこで、工業用水を活用し、飲料水やトイレの洗浄水等として利用可能にしておくことで、災害時の断水リスクを軽減できます。
これにより、緊急時の対応力が向上するため、工業用水の再利用はBCP(事業継続計画)対策としても有効です。
工業用水を「飲める」水にするための浄化プロセス

工業用水を飲料水として利用するには、複数の高度な浄化プロセスを経る必要があります。以下で、その具体的な手順を説明します。
1. 行政への確認・専用水道申請
まず、工業用水を飲用水に転用するためには、行政への確認と専用水道の申請が必要です。これにより、水質基準を満たすための法的な手続きを進めることができます。
2. 取水・貯留
原水そのままの工業用水を取水し、原水槽に貯留します。この貯留により、安定的な浄化プロセスの基盤を確保します。
3. 前処理(砂ろ過)
取水した工業用水は、膜ろ過に適した状態にするために砂ろ過を行います。この工程では、水中の大きな不純物や砂等物理的に除去します。
砂ろ過は水流を利用して異物を取り除く方法で、次の工程である膜ろ過の効率を高める重要なステップです。
4. 膜ろ過
砂ろ過後の水を、さらに高度な膜ろ過システムで処理します。ここでは、水道法に基づく水質基準を満たすことを目指し、微細な不純物を取り除きます。
特に、O-157やクリプトスポリジウムといった病原菌や微生物を除去することが主な目的で、膜ろ過には逆浸透膜(RO膜)や限外ろ過膜(UF膜)などが使用され、高い精度でのろ過が可能です。
5. 殺菌処理と水質調整と水質監視
膜ろ過を終えた水に対し、塩素消毒や紫外線殺菌を施します。この段階では、残留塩素濃度や水素イオン濃度(pH値)を管理し、安全で安定した水質を維持します。また残留塩素濃度や濁度、細菌数などをリアルタイムに測定し、飲料水としての安全性を確保します。さらに、水質基準を満たしているかどうかの確認も定期的に行います。
6. 供給
最終的に、浄化された水が受水槽に供給されます。この水は上水道と併用されることが多く、用途に応じて適切に使用されます。飲料用だけでなく、災害時の緊急用としても対応できるよう設計されています。
ゼオライトの工業用水浄化技術

弊社では、生産工場や食品工場での工業用水を水道水質基準レベルまで浄化した事例があり、製品の安全性や品質管理に貢献しています。
最後に、弊社ゼオライトの工業用水浄化技術の特徴についてご紹介します。
高度な膜処理による飲料水質の実現
弊社の工業用水浄化技術では、UF膜(限外ろ過膜)やRO膜(逆浸透膜)を用いた高度な膜処理を行っています。
この技術により、不純物や細菌を効果的に除去し、水道水質基準値をクリアする飲料水レベルの水を生成することが可能です。この処理は、井戸水浄化システムと同等の高精度な浄化処理を実現しており、安全で信頼性の高い水を供給します。
環境と経済性の両立
弊社の浄化技術は、高い浄化性能を持つだけでなく、効率的な運用によりエネルギーコストの削減や廃棄物の削減を実現しています。
これにより、環境負荷を軽減しながら導入や運用にかかる費用を抑えることができ、長く安心して使える仕組みを提供します。
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